20101127日 

《執筆者》 伊藤 勝彦 

 

はじめに

2009年の新規上場企業数は、昨年から30社減少し19社となった。そして1992年の26社を大きく割り込んだ。わずか4年前の2006年には上場企業は188社であったから10分の1の水準にある。それにもかかわらず、ヘルスケア関連企業については、昨年から1社減にとどまり7社の上場があった。そのうち、創薬ベンチャー企業は、テラ、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所の3社である。上場前の増資における株価よりも公募価格を低く抑え、上場時の募集資金を下げるなどの苦肉の策を取っての上場である。

過去の創薬ベンチャー企業の上場企業数を振り返ると、03年では、メディビック(現株式会社メディビックグループ)、メディネット、オンコセラピー・サイエンス、総合医科学研究所(現 株式会社総医研ホールディングス)の4社が、04年においては、新日本科学、DNAチップ研究所、そーせい(現 そーせいグループ)、LTTバイオファーマ、タカラバイオの5社、05年ではメディシノバ・インク、エフェクター細胞研究所(現 株式会社ECI)の2社、07年は免疫生物研究所、ジーエヌアイ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの3社、08年はナノキャリア、カルナバイオサイエンス、アールテック・ウエノの3社が上場を果した。公募価格の初値に対する騰落率をみても、05年まで全てのバイオ企業が公募価格以上をつけていたが、05年に上場したエフェクター細胞研究所は、公募価格を3割以上割り込こんで以来、厳しい状況が続いている。2009年に上場した企業ではキャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所の2社は公募価格よりも初値ベースで上回った。一方、テラは、初値では公募価格で下がったものの、その後、株価は急騰して、初値の3倍以上の株価となっている。

1.大学発ベンチャー設立年度別起業数

出典: 経済産業省「平成20年度大学発ベンチャーに関する基礎調査」

 

新産業の育成を目的に、経済産業省は、02年から3年後の20053月までに大学発ベンチャー企業1000社設立の計画(平沼プラン)を掲げ、研究助成対策や経営支援制度をおこなってきた。その結果、08年末時点で確認された全国の大学発ベンチャーは、目標値をはるかに超え1809社(前年度54社増)となった。しかし、04年度をピークとして新規設立数は縮小傾向にある。

バイオベンチャー企業を取り巻く環境は依然として厳しい。国内最大手の株式会社ジャフコはじめ、ベンチャーキャピタルが、創薬ベンチャー企業、アーリーステージのバイオ企業への投資を控えている。ベンチャー企業を支援し、企業価値を上昇させ、キャピタルゲインを得ることがベンチャーキャピタルの使命であるはずなのだが。厳しく言えば、ベンチャーキャピタル自身も、自己の存在を否定しなければ生き残れないところまで来ているといえる。バイオベンチャー企業は、生き残りをかけ、M&Aを戦略とする時期に入ったと言って良い。M&A戦略であればより大きなファンドが関わることができる。また、国が組成した産業革新機構のファンドの活躍にも大いに期待したいとことである。

 

〈創薬型企業〉

【アンジェスMG株式会社】

現大阪大学大学院教授 森下 竜一氏が、1999年に設立した創薬ベンチャー企業(旧メドジーンバイオサイエンス株式会社)。大学発バイオベンチャー企業の先駆けである。20029月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場した。

BioMarin Pharmaceutical社から国内での開発及び販売権を取得したgalsulfase(製品名Naglazyme)は、078月に国内で申請したムコ多糖症Ⅵ型治療薬で、076月、厚生労働省から希少疾病用医薬品の指定を受け、083月に承認されて同年4月に発売となっている。

自社開発品では、肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子の治療用プラスミド(AMG0001)のコラテジェンである。旧第一製薬と遺伝子医薬品の閉塞性動脈硬化症、バージャー病などの末梢動脈疾患治療薬および狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患治療薬の日本・米国・欧州における独占的販売契約を締結していた。しかし、092月に第一三共は、開発ポートフォリオ見直しの結果、米国および欧州に関する独占的販売契約について契約を終了している。AMG0001の臨床試験は、重症虚血肢を有する閉塞性動脈硬化症患者を対象に国内の57施設の多施設プラセボ対照二重盲検比較試験で実施されている(n=40)。治験薬を下肢の虚血部位に4週間間隔で2回筋肉内投与し、その後、8週間観察した。主要評価項目は、治験薬投与12週後の安静時疼痛又は虚血性潰瘍の大きさの改善率。その結果、薬物投与群が70.4%19/27例)に対し、プラセボ群は30.8%であった(p=0.014)。安全性についても問題はないとしている。現在、末梢動脈疾患では、日本では083月に申請して審査中にある。米国ではフェーズⅢの準備中にあり、091123日に米国食品医薬品局(FDA)からそのプロトコールについて、Special Protocol Assessmentの合意を受けている、現在、共同開発を実施するパートナー候補と提携交渉中である。虚血性心疾患では、米国でフェーズⅠの段階にある。

NF-κBデコイオリゴのアトピー性皮膚炎治療薬候補はフェーズⅡの段階であるが、0811月、アルフレッサファーマとの共同開発を終了した。さらに、海外の進捗は、米Meyer Pharmaceuticals社に対して0711月に北米および欧州における独占的な開発販売権を譲渡後、さらに米Transcription Factor Therapeutics社にサブライセンスされていた。しかし、Transcription Factor Therapeutics社の債務不履行によって、0912月に同社が解約通知書を送ることになる。その後、103月、塩野義製薬とNF-κBデコイオリゴの共同開発に関する協議を正式に開始する基本合意に漕ぎ着けた。仕切り直しの状況にある。独Avontec社とクロスライセンス契約を締結していたAVT-01は、0611月に欧州でフェーズⅡ試験中。AVT-01の喘息を含む呼吸器及び皮膚疾患のアジア地域における独占的ライセンスを得ている。GEN0101は、091月にTSD Japanに前立腺がんの国内での独占的製造、開発、販売権を譲渡した。免疫の賦活化剤となる遺伝子治療のAllovectin-7については、提携先の米Vical社において転移性悪性黒色腫のフェーズⅢ試験が実施中である。FDAとの間でSPA合意がなされている。

200912月期の連結決算については、開発協力金収益の減少で減収となった。研究開発費は、234900万円。

2.アンジェスMGのパイプラインの状況(自社品)

出典: 同社ホームページ

 

3.アンジェスMGのパイプラインの状況(提携開発品)

出典:同社ホームページ

 

【オンコセラピー・サイエンス株式会社】

現代表取締役の冨田憲介氏が、01年に設立したがん関連遺伝子および遺伝子産物を標的としたがん治療薬、がん治療法の研究開発を目的として設立された大学発ベンチャー企業である。東京大学医学部医科学研究所ヒトゲノム解析センターの研究成果を事業化する。200312月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。冨田氏は旧三共入社後、外資系製薬企業、02年には、先に株式上場したアンジェスMGの代表取締役を勤めた人物。

東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターとの共同研究でがんの網羅的遺伝子発現解析を実施している。この共同研究は実際の臨床症例から見出された結果であり、さらにLaser Microbeam Microdissectionや独自のc-DNAマイクロアレイによって、既に12種のがん種、585症例の解析を完了している。つまり、臨床サンプルの入手、それに続くWetDryの両解析と一連のスキームを行えることで優位性を確保している。これらの技術、成果を製薬企業が評価し、契約の締結がなされている。扶桑薬品工業と提携しているがんの新生血管阻害剤OTS102の膵臓がんに対するPEGASUS-PC Studyと名付けられたポビタル試験であるフェーズⅡ/Ⅲは、最後の被験者の登録が102月に完了した(n=153)。今後キーオープンを行い、実薬群とプラセボ群の比較をする計画である。OTS102は、ペプチドKDR169を含有する注射剤である。KDR169が腫瘍新生血管内皮細胞を特異的に傷害し、抗腫瘍効果を示す。そして、101月には扶桑薬品は、大塚製薬に対してOTS102の日本における製造販売権の再許諾を行い、承認後は各々のブランド名で共同販売を行い、上市後の製造については、大塚製薬が行う契約を締結した。200712月に大塚製薬と提携した固形がんに対するペプチドワクチンOTS11101は、0910月からフェーズⅠ試験を開始した。20092月に塩野義製薬と提携が成立している膀胱がんを対象としたペプチドワクチンS-288310については、同年11月にフェーズⅠ/Ⅱ試験が開始された。20105月には、Laboratoires OncoTherapy Science Franceの設立し、がん治療用抗体を開発することを発表している。この抗体の標的はFZD10と呼ばれるタンパク質で、その抗体による滑膜肉腫治療を期待している。

20103月期の連結決算は、増収増益であった。売上高は、大塚製薬と提携しているOTS11101および塩野義製薬と提携しているS-288310の臨床試験が新たに始まったことによるマイルストン契約料収入などで前年から193000万円増加している。113月期も増収増益を見込む。

 

【そーせいグループ株式会社】

現代表執行役社長 田村眞一氏が906月に医薬品開発を目的に設立した。20047月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。田村氏は、旧藤沢薬品で開発企画・調査企画を担当、そして、米ジェネンテック社の日本法人の代表取締役社長を務めた人物である。設立当初は、海外のバイオテクノロジー企業と日本の製薬企業の架け橋として、医薬品の技術移転を中心に事業をおこなっていたが、医薬品開発を主力事業とするビジネスモデルに転換した。20058月には英Arakis社を買収している。さらに、臨床試験実施については、既存株主でもあるCROのイーピーエス株式会社と協力体制を築いている。初の薬剤と期待されていた酢酸リュープロレリンの徐放性注射剤SOT-375については、052月に剤形の追加で輸入申請していた。しかし、厚生労働省は、当社が主張する剤型追加に係る後発医薬品による区分ではなく、新剤型医薬品の区分にて申請するべきと、見解に相違があり、最終的には061月に申請の取り下げに至っている。また、056月には腹圧性尿失禁治療薬SOU-001のフェーズⅡ試験を被験者のリクルート状況が非常に厳しいという理由で開発を中止した。さらに、0611月には、関節リウマチ治療薬AD452のフェーズⅡ試験が有効性の主要評価項目および副次評価項目における基準を満足さなかったことから開発を中止した。加えて、066月にムンディファーマ株式会社と契約していたがん性突出痛治療薬候補のAD923は、082月、欧州でフェーズⅢ臨床試験を開始したが、噴霧器具に、構造的な不具合がみられたために同年3月試験が中断されている。同年12月には、ムンディファーマから権利の買い戻しをおこなった。AD923は、オピオイド系鎮痛剤フェンタニルを有効成分とする舌下噴霧製剤である。20079月には、線維筋痛症候群治療薬候補AD337のフェーズⅡ試験においてプラセボとの統計学的有意差が認められなかった。これらのように開発品の中止が続き苦戦している。

一方、進捗しているプロジェクトとしては、同社グループおよび英Vectura Group社が見出したNVA237(一般名、臭化グリコピロニウム)の進捗は順調のようだ。054月、Novartis社に全世界における独占的開発・販売権を供与している。20096月から導出先のNovartis社が慢性閉塞性肺疾患治療薬としてフェーズⅢ試験を開始した。NVA237は、ムスカリンM3受容体拮抗作用を持つ気管支拡張剤で、24時間以上と長い薬効持続性が期待されている。さらに、NVA23711回型の吸入気管支拡張剤indacaterolとの配合剤QVA149がフェーズⅢの段階にある。仏Laboratoire HRA Pharma社から014月に日本、オーストラリアおよびニュージーランドにおける独占的販売権を取得していた緊急避妊薬SOH-075099月に同社が申請し、同年11月、あすか製薬と国内販売権契約を締結している。また、神経障害性疼痛治療薬候補のSD118はフェーズⅠ試験が終了した。SD118は、20066月に締結した提携契約に基づき、豪DeuroDiscovery社および英NeuroSolutions社と共同で開発を進めている。

4.そーせいグループのパイプラインの状況

出典: 同社ホームページ

 

20103月期の連結決算は、一時金収入で増収となった。主としてNovartis社からのNVA237のフェーズⅢ臨床試験の開始によるマイルストン収入750万ドル、SOH-075の承認申請によるあすか製薬からのマイルストン収入およびサンド社の緊急避妊薬NorLevoの販売収入が計上されている。販売費および一般管理費総額を前期369800万円から264600万円に圧縮、うち研究開発費については78500万円から33800万円と56.9%減少させた。経費を削減し、103月期末時点で185000万円の現預金を確保した。20113月期の計画は、QVA149のフェーズⅢ試験の開始に伴う750万ドルのマイルストン収入およびのサンドに譲渡したNorLevoによって売上高8億円を見込む。

 

【株式会社LTTバイオファーマ】

1988年に代表取締役会長であった故水島 裕氏によって設立された株式会社エルティーティー研究所から、031月新設分割によって設立された。DDS関連技術の研究開発支援をおこなう。200411月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。自社で研究所を持たず、東京慈恵会医科大学DDS研究所、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターと産学連携の形で共同研究・委託研究を行っている。また、049月には代表取締役社長の稲垣氏および取締役経営管理本部長の中田氏が辞任し、代表取締役会長の水沼氏が社長兼任となっていた。20075月に丸紅株式会社出身の山中 譲氏が代表取締役社長となり、同時に、株式会社アスクレピオスを株式交換による完全子会社化した。しかし、083月に連結子会社アスクレピオスが債務超過状態であること、ならびに匿名組合契約に基づく出資金を資金不足のため投資家に償還することができないことが判明したため、08319日に東京地方裁判所に破産申立てを行い、同日申立受理、破産手続開始の決定がなされた。負債総額は527000万。その後、代表取締役社長に就任した鈴木 巌氏を中心とした新体制で、信頼回復に向けての改革がおこなわれている。筆頭株主は、提携先の北京泰徳製薬有限公司となっている。

臨床試験中のパイプラインは、AS-013PC-SOD(ミジスマーゼ(遺伝子組換え))の二つである。AS-013は、大豆油にエステル化したプロスタグランジンE1を溶解、薬効の持続を特徴とする。AS-013は、第一世代であるリプル、パルクス(田辺三菱製薬/大正製薬)の第二世代PGE1製剤に位置けられている。田辺三菱製薬は、米国で慢性動脈閉塞症のフェーズⅢ試験を実施したが、065月には、その成績から判断して共同開発を中止している。そのために単独で東欧において試験を開始し、その結果をもって国内外企業にライセンスする計画だ。北京泰徳有限公司に対し、099月にAS-013の中国での権利を導出した。PC-SODは、活性酸素を生体内で消去する酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)にレシチン誘導体分子を共有結合させたタンパク製剤。潰瘍性大腸炎を対象とした前期フェーズⅡ試験を実施し、0611月に有効性を確認したと報告がなされている。20076月には、特発性間質性肺炎のフェーズⅡ試験を開始した。20078月には中国北京泰徳製薬有限公司に対して中国での開発・製造・販売権を譲渡している。適応症は、脳梗塞を含む虚血性疾患、潰瘍性大腸炎、間質性肺炎、急性膵炎。

一方、製剤の打錠杵の改良について工作機械部品の製造及び加工会社である株式会社マシンパーツとの共同研究を進めてきた結果、打錠杵(EIP杵)の開発に成功している。EIP杵は表面合金化技術特性電子ビームを用いた表面合金化技術で製造される。今後はEIP杵の販売拡大を進め、EIP事業を創薬事業に並ぶ柱として成長させる計画である。

5LTTバイオファーマのパイプラインの状況

出典:同社ホームページ

 

20103月期の連結決算は、大幅な減収となった。売上高は薬局事業を営むソーレの株式を売却したため前年同期比91.7%減であった。営業損失は5億円、NEDOの助成金、資本提携している北京泰徳製薬株の配当金などで営業外利益が51400万円あったため当期利益は4700万円となり最終損益では上場後初の黒字だった。20113月期は売上高が24.3%増の13000万円。売上高のうち約8割は、錠剤を製造するための装置の販売によるものである。

 

【メディシノバ・インク】

20009月に医薬品開発を目的に米国カリフォルニア州サンディエゴ市に設立された。20052月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場した。上場直後にプレジデントであった清泉 貴志氏は退任、その後、岩城 裕一氏が代表取締役会長、社長兼CEOの体制をとっていたが、073月には、岩城氏は、代表取締役社長兼CEO、取締役会長には、ジェフ・ヒマワン氏が就任している。200912月には神経疾患治療薬の開発に注力するAvigen社を買収した。

20077月に発表された開発に関する新方針によると、喘息急性発作薬MN-221と、多発性硬化症薬MN-166に経営資源を集中するという。気管支喘息薬などその他の開発パイプラインについては、大手製薬企業への導出など他社とのアライアンスも視野に、製品最大化を目指す考えだ。パイプラインの増加と進展に伴い、資源を有効に活用すべく、選択と集中に踏み切った。

MN-221は、091月から約200名の急性発作患者を対象とした大規模なフェーズⅡ臨床試験を北米、豪州、ニュージーランドで開始している。また、期待されるMN-166は、再発性多発性硬化症患者を対象に、プラセボ群対照多施設・無作為二重盲検比較試験で実施されている(n=297)。2年間の治療プログラムの最初の1年間の結果においては、治療開始後12ヵ月間再発に関してプラセボ群と比較して60mg/日の薬物投与群は、統計的に有意であった(P0.03)。さらに、最初の再発までの経過時間にも有意さが認められている(P0.04)。副作用も軽い胃腸障害が確認されのみのようだ。(MN-166投与群 36%、プラセボ投与群:13%)。さらに、MN-166については、ヘロイン中毒患者における薬物依存症の治療薬としてニューヨーク州精神医学研究所とコロンビア大学がフェーズⅠb/a臨床試験を進めている。

 

6.メディシノバ・インクのパイプラインの状況

出典: 同社ホームページ

 

200912月期の連結決算は、売上高は0(前年同期と変わらず)、営業損益2123万ドルであった。研究開発費は1090万ドルとなり、前期の1380万米ドルから290万米ドル減少した。主な内訳は、多発性硬化症を適応とするMN-166のフェーズⅡ試験が完了し270万ドルの減少、固形がんを適応とするMN-029およびその他の非優先的製品候補の臨床試験完了に伴い90万ドルの減少、研究開発に係る人件費用の120万ドルが減少した。一方、喘息の急性発作およびCOPDを適応症とするMN-221のフェーズⅡ試験に伴う190万ドルが増加している。次期については売上高の計上は計画していない。営業損失は当期比で330万ドル減の1790万ドルを見込む。

 

【株式会社ジーエヌアイ】

200111月に、九州大学大学院農学研究院遺伝子資源工学専攻教授の久原 哲氏の成果を事業化する目的で設立された。2005年には上海ジェノミックスと合併、創薬探索研究の強化を図った。20078月に東証マザーズ市場に上場した。しかし、上場直後の0712月に代表取締役会長兼社長 佐保井 久理須氏が突如辞任、取締役専務CFOであった鈴木 勘一郎氏が代表取締役社長兼CFOに就任したが、すぐに上海ジェノミックス出身のルオ・イン氏が代表取締役社長兼CFOに就任した。パイプラインについては、F647が特発性肺線維症と放射線性肺炎の二つの適応症でそれぞれフェーズⅡ臨床試験が終了した。特発性肺線維症では、中国国家食品薬品監督管理局との協議の結果、フェーズⅢ試験をスキップして0912月に申請した。放射線性肺炎についてもフェーズⅢ臨床試験を計画する。肝線維症治療薬F351については、フェーズⅠを終了した。

売上高は前年同期から12200万円減少となった。営業損失は5600万円減少、経常損失は53300万円減少、純損失は89400万円減少した。

 

【ナノキャリア株式会社】

19966月に、現代表取締役社長 中冨 一郎氏が医薬品および遺伝子のドラッグデリバリーシステムおよび診断薬および医薬用具等の材料システムの開発を目的に設立。20083月東京証券取引所マザーズ市場に上場した。

パイプラインについては、パクリタキセルミセル(NK105)は02年に導出した日本化薬が胃がんを対象疾患に国内でフェーズⅡを実施中、ナノプラチン(NC-6004)は、089月に導出した台湾Orient Europharma社が膵臓がんを対象に台湾でフェーズⅠ/Ⅱ実施中、ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)については導出先のスイスDebiopharm社ががん患者を対象に英国、仏国でフェーズⅠの段階。特にダハプラチン誘導体ミセルには大型化の期待がかかる。ダハプラチンは、オキサリプラチンの活性体。そのダハプラチンをミセル化した製剤がダハプラチン誘導体ミセルである。

20103月期の決算は減収であった。売上高は、予定していたナノプラチンとダハプラチン誘導体ミセルが契約に至らなかったために期初の予想から38800万円の未達となった。研究開発費は25500万円。

 

7.ナノキャリアのパイプラインの状況

出典:当社ホームページ

 

【株式会社アールテック・ウエノ】

19899月に上野 隆司博士が中心となって医薬品の研究開発を行うことを目的として設立。20084月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に株式上場した。

20014月に上野製薬株式会社から、レスキュラ点眼液の製造販売業務の承継を含む事業の譲渡を受けている。当社は、医薬品の開発・製造に関わる独自のノウハウをコア・テクノロジーにすえ、眼科疾患むけ新規医薬品の研究開発、緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ®点眼液」の製造販売、グローバルに対応する医薬品開発の支援サービスの3つを事業の柱としている創薬型ベンチャー企業である。

20092月、株式会社スキャンポファーマは、慢性特発性便秘治療薬ルビプロストン(アミティーザ)をアボットジャパンに日本おける独占的に商業化する権利、ならびに日本でアミティーザを追加効能にて開発する優先交渉権を、アールテック・ウエノには日本・アジア・オセアニア地域についての独占的製造供給権を与えた。一方、同社は、スキャンポ社の子会社であるスキャンポファーマアメリカズ社(SPA社)へのイソプロピルウノプロストン(レスキュラ点眼液)の米国およびカナダにおける緑内障および高眼圧症の販売承認及び販売権の譲渡、関連特許のライセンス、同製品のSPA社への独占的な製造供給について契約締結することに合意している。創業者である上野 隆司氏は、SPA社の最高経営責任者兼会長であり、両社に影響力をもつ。

研究開発の進捗は、106月にルビプロストンの日本人慢性特発性便秘症を対象にしたフェーズⅢ試験が、プラセボに対して統計学的に有意な改善を示したことを発表している。網膜色素変性治療薬候補UF-021と男性型脱毛症治療薬候補RK-023がフェーズⅡ試験を実施中である。遺伝子組換え人血清アルブミンを有効成分とするドライアイ治療用点眼液RU-10については、田辺三菱製薬がRU-10の臨床試験用治験薬原料を供給できなくなったことからフェーズⅠ試験の途中で終了した。

8.アールテック・ウエノのパイプラインの状況

出典: 同社ホームページ

 

20103月期の連結決算は、減収減益であった。レスキュラ点眼液の売上高は前年同期比14.9%減の263600万円。米国スキャンポ ファーマ社から北米地域の独占的な製造を受託している慢性特発性便秘症および便秘型過敏性腸症候群治療薬であるAmitizaカプセルについては、同47.6%減の132200万円と大きく減少した。20113月期は、日本国内向けのレスキュラが薬価改定の影響を受けるが、米国においてはレスキュラ再上市を予定していること、Amitizaについてはスキャンポ ファーマが販売提携先の武田薬品に対し、提携の終了を求める調停を申請中であるが増収とすることで増収増益を見込む。

 

【株式会社キャンバス】

20001月に、名古屋市立大学と藤田保健衛生大学発の企業として、副作用の少ない抗癌剤の研究開発を目的に設立。細胞周期に関する研究成果をもとに、正常細胞に影響が少ない抗癌剤の研究開発を目的に設立された。そして09917日に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。がん治療薬の研究開発を行っている。細胞周期G2期チェックポイントを阻害する抗がん剤CBP501については、武田薬品との共同事業化契約に基づき、米国での臨床試験が進んでいる。CBP501・シスプラチン・ペメトレキセドの3剤併用療法での悪性胸膜中皮腫のフェーズⅡ試験が0710月から、非小細胞肺がんを対象にしたフェーズⅡ試験が096月から開始されている。CBP501の臨床開発は、073月に締結した共同開発契約に基づいて武田薬品が研究開発費を負担していたが、106月に提携が解消された。この解消によって武田薬品から75000万円が支払われる。薬剤スクリーニング法から見出されたパイプラインであるCBS9100シリーズについては、リード化合物CBS9106の前臨床試験が継続されている。

9.キャンバスのパイプラインの状況

出典:ホームページ

 

【デ・ウエスタン・セラピテクス研究所】

19992月に医薬品開発を目的とし、有限会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所を設立した。20091023日に大阪証券取引所NEOに上場した。プロテインキナーゼを中心とした阻害剤の研究開発を進めている。同社は化合物ライブラリーを保有しており、これらの開発過程で蓄積したデータやノウハウを活用して、新薬候補化合物を合成し、スクリーニングするとともに、対象疾患におけるプロテインキナーゼの生理的役割の解明を行なっている。標的タンパク質を同定については、独自に開発した「ドラッグ・ウエスタン法」を活用する。パイプラインについては、閉塞性動脈硬化症を適応症とする抗血小板剤K-134が日米でフェーズⅡa、緑内障を適応症とするK-115は国内フェーズⅡaの段階。両候補品は興和に導出している。抗がん剤のHMN-214は国内フェーズⅠが終了、日本新薬が開発をしている。

研究開発費は前期同期比11.6%増の17400万円。201012月期は新規緑内障治療剤の導出を計画、その契約一時金収入によって売上高は24600万円を見込む。

 

 

〈細胞医療支援・再生医療型企業〉

【株式会社メディネット】

現代表取締役の木村 佳司氏が、1995年に設立した免疫細胞療法支援ベンチャー企業。200310月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。当社は、ガン患者に免疫細胞療法をおこなう医療機関に対して、総合支援サービスを中心とした細胞医療支援事業をおこなう。

当社が提供する技術は、細胞移植医療の中の免疫細胞療法に位置づけられる。生体外で活性化・増殖させたTリンパ球を再び体内に戻して、体内に存在するガン細胞やウイルスが感染した細胞を排除する技術である。刺激剤としてIL-2と抗CD-3モノクローナル抗体を使用する「CD3-LAK療法」とよばれる手法だ。本治療は先端医療であり、公的健康保険の適用外の自由診療にあたる。

一方、新技術の導入として、0810月に、国立がんセンターとがん抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を効率的且つ大量に誘導できる新たな細胞培養技術の開発に向けた共同研究に係る契約を締結し、さらに093月には、熊本大学および財団法人くまもとテクノ産業財団とHSP105由来がん抗原ペプチドの特許権利譲渡に係る契約を締結している。

20099月期の連結業績は、売上高29億円、営業利益29300万円、当期利益24500万と大幅な増収と黒字転換を達成した。単体の業績は、売上高が前年同期比52.2%増の279700万円、営業利益28100万円、当期利益24100万円だった。設備投資は16600万円、研究開発費は37700万円。メディネットの技術を用いて治療を実施する医療機関が103月末までに56施設に増加しており、109月期の通期決算も拡大傾向にある。制御性T細胞に対する抗体を取得し、免疫細胞療法と組み合わせた新たな治療法の確立を目指す。0910月にナノキャリアとがん治療分野での包括的な共同研究提携した。

 

【株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング】

19992月に、株式会社ニデックが母体となり、株式会社イナックス(現、株式会社INAX)、富山化学工業株式会社ならびに株式会社セントラルキャピタル(現、三菱UFJキャピタル株式会社)が共同出資し、ティッシュ・エンジニアリングを技術ベースに再生医療を事業領域とする企業として設立。200712JASDAQ証券取引所NEO市場に上場した。国内初の自家培養表皮の開発を進める。現在も大株主にニデック、INAX、富山化学工業が名前を連ねる。

20039月から自家培養表皮の重症熱傷に対する治験開始し、0710月に自家培養表皮ジェイスが日本初の再生医療製品として厚生労働省から製造承認を取得している。自家培養軟骨は障害を受けた膝関節軟骨の関節機能の改善を目的として、098月に製造販売承認申請した。また、041月に参入した自家培養角膜上皮は、治験前の確認申請の適合に向け、引き続き主要な照会事項への対応を進めている状況である。

20103月期の連結決算は、増収であった。事業別セグメントの売上高については再生医療製品事業が17200万円、研究開発支援事業が3900万円。研究開発費は、42500万円。20113月期は、自家培養表皮ジェイスの売上高が増え、大幅に売上高は増加する見込み。その一方で再生医療製品事業における生産体制および販売体制の充実に向けた人員補強に伴い人件費が増加する。

 

【株式会社テラ】

20066月に樹状細胞ワクチン療法の研究開発と医療支援サービスを目的に設立された。2009326日にジャスダック証券取引所NEOに上場した。がんワクチン療法の一つである樹状細胞ワクチン療法を中心にその応用技術であるアイマックスがん治療(免疫最大化がん治療:Immune maximizing therapy for cancer)の普及を進める。全国の医療機関に情報提供活動を実施し、契約医療機関数は前事業年度末の10から14に増加した。当事業年度の樹状細胞ワクチン療法の症例数が1200となり、累計で約2100症例を超えた。

200912月期決算は、増収増益であった。201012月決算は、大学病院やがん拠点病院等の医療機関への営業開拓を引き続き進めていくことで連続の増収増益を見込む。

 

【株式会社セルシード】

20015月に細胞シート工学の実用化を目的に設立された。2010316日に大阪証券取引所NEOに上場した。細胞シート再生医療事業と再生医療支援事業を行う。細胞シート再生医療事業では、パイプラインとして、角膜再生上皮シートの欧州での開発を筆頭に中心として5つの細胞シートを再生医療医薬品として開発する。欧州では角膜再生上皮シートの販売承認の取得を目的として審査機関である欧州医薬品庁との事前相談中にある。

 

〈創薬支援型企業〉

【株式会社医学生物学研究所】

20103月期の連結決算は増収、増益であった。売上原価率が2.0%改善した結果、売上総利益は6.9%増の25200万円増益の39700万円となった。研究開発費は前期の108900万円から1.4%増加の11400万円であった。事業別セグメントについての業績は、臨床検査薬および研究用試薬周辺事業の売上高は前期から3.7%増の21600万円増収の605000万円。そのうち臨床検査薬の売上高は、前期比13.6%増の379000万円となった。主力製品の自己免疫疾患検査試薬の売上高はリウマチ検査薬の抗CCP抗体検査試薬の伸長などで同14.5%増の288000万円、腫瘍マーカー分野の売上高は抗p53抗体検査試薬も前期比32.3%増の39900万円となった。基礎研究用試薬では注力分野のテトラマー製品が続伸して同7.6%増166400万円。製造受託は同12.2%増の38500万円。投資関連事業売上高は同17.1%減の4300万円となった。20113月期も複数の新製品発売によって増収増益を計画する。

 

【株式会社トランスジェニック】

1998年にタンパク質機能解析用試薬である抗体の開発、製造、販売を目的として、株式会社クマモト抗体研究所として設立。その後、遺伝子破壊マウスの開発および遺伝子機能情報などを提供する熊本大学発のバイオベンチャー企業として、現社名に変更。200212月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。20096月には、株式上場時の社長であった井出 剛氏が取締役に再度就任し、さらに井出氏が代表者を務める株式会社果実堂を連結対象会社化している。果実堂の事業内容は大規模有機栽培ベビーリーフ販売事業であり、現業との相乗効果は薄く、20105月に子会社の関係が解消されている。経営に安定感がない。

2001年に旧山之内製薬株式会社、旧住友化学工業株式会社など数社と遺伝子破壊マウスの配列情報販売契約を締結する。20073月、米Deltagen社の創薬ターゲットの探索や同定に有益な遺伝子破壊マウスやその関連サービス製品の日本・中国・韓国における販売代理店契約を締結している。20094月には、当社が権利を保有する遺伝子破壊マウスについて、武田薬品工業株式会社と使用権許諾契約を締結した。知的財産については、096月に新規膵臓がんマーカーの特許が国内で、094月にはGANPマウス技術に関する特許が欧州で、101月および3月にそれぞれ日本と韓国で成立、トラップマウス技術に関する特許は103月に欧州で成立している。

20103月期の連結売上高は増収となった。管理部門人件費を削減し営業利益赤字幅が減少した。事業別セグメントの業績については、遺伝子破壊マウス事業は遺伝子情報TG Resource Bankおよび受託事業が順調に推移して売上高は前年比31%増の19000万円、抗体事業は受託サービスを抑制したため売上高は前年から2000万円減少の5100万円、試薬販売事業はサイトカイン販売が好調に推移したため売上高は前年の6700万円から9200万円に増加した。連結対象にした食品事業は売上高22000万円であるも営業損失は6200万円と利益面で足を引っ張ることになった。創薬支援サービスの売上高は、好調に推移し4800万円であった。

 

【株式会社総医研ホールディングス】

現取締役 梶本 修身氏が、有限会社総合医科学研究所として1993年に設立した臨床試験受託企業。200312月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。

臨床試験受託(CRO)の新しいビジネスモデルを立ち上げた大阪大学発のベンチャー企業である。既にいくつかのCROが上場しているが、当社は単に臨床試験を受託するビジネスモデルではなく、臨床試験に必須なバイオマーカー、さらにそれを組入れた生体評価システムまでも開発する。加えて、当社は、ウイルスを用いた疲労バイオマーカー等の事業化を行う株式会社ウイルス医科学研究所、トクホに関する情報発信やマーケティングリサーチを行う株式会社エビデンスラボ、医薬品開発受託機関である株式会社クリニカルトラストなどを設立し、事業の多角化を推進してきた。20071月には、グループ全体の経営効率の向上やコーポレートガバナンスの強化等企業価値の最大化を図るため、純粋持株会社化している。大手の食品・製薬企業等の開発動向が鈍化し、新規の開発案件が減少しているため、開発の前段階、市販後の調査やマーケティングへの関与、食品だけではなく医薬品や化粧品への事業領域の拡大、さらには自社での製品開発や販売などビジネスモデルの拡張を進めている

20096月期の連結決算は、減収減益となった。事業別セグメントの売上高は生体評価システム事業が前期同期比32.5%減の73800万円、化粧品事業が同11.5%減の116700万円、マーケティング事業は同58.9%減の5300万円、健康補助食品事業は1500万円と各セグメントともに低調であった。20106月期も減収の計画であり、赤字幅は拡大する。

 

【株式会社新日本科学】

1957年に設立された医薬品開発の受託研究企業。20043月に東京証券取引所マザーズ市場に上場、08年には東京証券取引所市場第一部に市場変更した。設立からおこなってきた前臨床試験受託事業において確固たる事業基盤を築き、その後、臨床薬理試験受託、薬物動態・分析受託、CRO、治験施設支援機関(SMO)などを包含して、国内唯一の医薬品開発過程における一貫した総合受託体制の確立に成功している。

また、注力している事業として、トランスレーショナルリサーチ事業がある。その成果として、20067月には、100%子会社であるTranslational Research社が開発した経鼻投与技術を用いた4種類の薬物〔FSH(卵胞刺激ホルモン)、PTH(副甲状腺ホルモン)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連ペプチド)およびGHRP(成長ホルモン放出ペプチド)〕の応用について、研究開発、製造、販売等に係る独占的権利を米Tokai Pharmaceuticals社に供与する契約を締結した。塩酸グラニセトロン経鼻製剤はフェーズⅡ試験を終了した。

20103月期の連結決算は、減収、営業利益で減益であった。所在地別セグメントについては、国内の売上高は前年同期比3.0%増の1374100万円、北米地域については同13.2%減の521600万円、その他の地域は同12.1%減の83600万円だった。事業別セグメントについては、前臨床事業は同1.6%減の1418100万円、臨床事業は同3.5%減の483000万円だった。売上原価は12200万円増加したが、販売管理費を49200億円減少させた。補助金などの営業外収益23300万円を計上して経常利益と当期純利益は増収となった。20113月期の通期業績予想は、売上高は同4.1%減の1826000万円で、赤字に転落する見込み。

 

【株式会社DNAチップ研究所】

元代表取締役社長の松原 謙一氏が、19994月にDNAチップの研究、開発を目的に設立。松原氏は大阪大学教授、日本分子生物学会会長を務めた人物。20043月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。

20064月には、既存製品AceGene®と比較して約2倍のIntensityの向上を実現したAceGene Premium Humanを日立ソフトと共同で開発。また、東レ株式会社との共同開発による3D-Gene" Yeast Oligo chip 6k2製品を発売した。その他、チップ解析の受託サービス、カスタムチップの受託作製をおこなっている。20097月には、抗リウマチ薬のインフリキシマブの投与前の採血検査による投与14週後の治療の効果を予測するサービスを開始、他の生物学的製剤にも拡大する計画である。

20103月期の業績は、減収減益となった。事業別セグメントでは、研究受託事業については事業仕分けに伴い大学などのゲノム医学解析事業への研究費が抑制された影響で計画から47200万円下回り、28600万円にとどまった。一方、商品販売事業は44000万円となった。20113月期の計画は、受託解析サービスにおいては、従来の大学、研究所中心のビジネスに加え、製薬会社、食品会社等の企業向けビジネスの拡大を目指し大口顧客への対応を強化する方針。診断支援サービスについては、インフリキシマブ効果予測検査の先進医療化を実現し、100解析以上の受注を計画する。売上高は前年同期比で2桁増、赤字幅の縮小を計画する。

 

【株式会社ECI

19996月に、当社名誉会長 金ヶ崎 士朗氏の細胞走化性の研究成果の事業化を目的に設立。東京大学医学部発ベンチャー企業。20053月に名古屋証券取引所セントレックス市場に上場した。20088月に、社名を株式会社エフェクター細胞研究所から現社名に変更している。当社が販売する測定装置TAXIScanは、半導体技術の一つである微細加工技術を応用し、シリコンウエハー上に数μmの深さを持つ構造を形成させたチップを使用する。チップをガラスと密着させることによって、数μmの深さを持つチャネルが形成され、そのチャネル内を遊走する細胞を顕微鏡で観察する。垂直方向の細胞移動であったボイデンチェンバー法とは異なりTAXIScanでは水平方向の細胞移動を観察できることになった。200512月には、英アストラゼネカ社と、065月には、富山化学工業株式会社とTAXIScaテクノロジーを用いた医薬品の開発候補化合物の探索について共同研究契約を締結した。

がん治療薬ECI301の実用化においては、0958日に米国食品医薬品局(FDA)に対してIND申請を行い、同年611日に認可を得ている。現在フェーズⅠ臨床試験を実施中である。20104月には中国中稷実業投資有限公司と共同開発合意契約の締結をした。しかし、中稷実業投資有限公司から契約一時金10億円が支払はわれていない状況にある。ECI301は、MIP-1αから製造したバイオ医薬品である。

20095月期連結業績の事業別セグメントの売上高は、創薬および創薬関連事業ではAstraZeneca社から喘息と慢性閉塞性肺疾患に対する共同研究契約収入などで8100万円、創薬ツール供給事業は9800万円、健康食品卸売および総合美容事業は13000万円であった。

 

【タカラバイオ株式会社】

20024月に設立。200412月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場した。宝ホールディングス株式会社の子会社。遺伝子工学研究、遺伝子医療、医食品バイオの3事業をおこなう。

遺伝子工学研究分野では、各種研究用試薬、理化学機器および研究受託サービスを提供する。特に等温キメラプライマー遺伝子増幅法(ICAN法)は、等温で遺伝子増幅ができる利点を持つ。従来、必要であった温度上昇装置が不要のため、大量の遺伝子増幅を安価におこなえる。遺伝子医療分野では、遺伝子に基づく診断検査などの予防医学から、細胞医療・遺伝子治療まで先端医療技術の開発をおこなう。国立がん研究センターと白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療、三重大学とがんを対象としたTCR遺伝子治療を推進する。医食品バイオ分野では、機能性食品素材の開発をおこなう。ブナシメジ、ハタケシメジを人工栽培し、販売している。20057月には、バイオ研究用試薬の老舗企業の米Clontech Laboratories社を買収した。200710月には、レトロネクチンによるTリンパ球拡大培養法を用いたがん細胞免疫療法の臨床研究を、中国・天津医科大学と共同で実施する契約を締結している。

20103月期の連結決算は、増収、営業利益増益であった。遺伝子工学研究分野における理化学機器、遺伝子医療分野におけるがん免疫細胞療法に関する技術支援サービスなどが堅調に推移、前期から41100万円増加した。利益面では、売上原価が前年同期比3.5%増で31200万円増加して928600万円となった。売上総利益は同1.0%増、前期から9800万円増加して1003900万円。販売費および一般管理費は、販売促進費などの減少によって同0.3%減の2700万円減少して948500万円となり、その結果営業利益が増収となった。研究開発費は329400万円。

事業別セグメントの業績については、遺伝子工学研究分野が円高の影響によって減少した一方で、理化学機器の売上高と研究受託サービスなどが増加した。その結果、売上高は前年同期比1.3%減の1668900万円、同4.5%減の754200万円となった。遺伝子医療分野においては、がん細胞免疫療法に関する技術支援サービスの売上高が進捗して136.4%増の39200万円となった。医食品バイオ分野の売上高は健康志向食品、キノコ関連製品が進捗して売上高は11.4%増の224300万円となっている。20113月期は医食品バイオ分野の進捗に増収増益を計画する。

 

【株式会社免疫生物研究所】

19829月に、現代表取締役社長の清藤 勉氏が医薬品、医薬部外品および検査試薬の免疫学的研究開発、製造、販売受託研究および受託生産を目的に設立。20073月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場した。事業内容は、主として抗体作製を基盤とする研究用試薬関連事業、医薬関連事業、及び米Taconic Farms社の実験動物を輸入販売する実験動物関連事業の3事業である。

研究用試薬関連事業では、EIA測定キット、免疫組織染色用抗体および抗体作製の受託サービスをおこなっている。実験動物関連事業では、米Taconic Farms社の遺伝子改変動物をあつかう。医薬関連事業では、抗生物質テイコプラニンの血中濃度を測定するタゴシッドTDMを発売している。また、抗体を利用した医薬品の研究開発をおこなっている。アスベストが病因とされている中皮腫について、順天堂大学と共同研究をおこなっている。

20103月期の連結決算は増収。牛海綿状脳症用検査キット売上げが伸長した。利益面では赤字幅を縮小した。事業別セグメントの業績については、受託サービスでの受注が大きく減少し、売上高は対前年比4.5%減の53700万円、実験動物関連事業は同2.9%増の36900万円、医薬関連事業は牛海綿状脳症に対する体外診断用医薬品の製造委託の受注増で売上高は同37.4%増の15000万円となった。本事業の医薬シーズライセンスに関しては、アステラス製薬に権利譲渡した抗ヒトオステオポンチン抗体(2K1)の関節リウマチ治療薬としての第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験が中止となり、今後の関節リウマチ治療薬に伴うマイルストン契約料の収入は発生しないこととなった。20106月にはジーエヌアイに中国市場開拓の目的でがん診断用の抗体を導出している。研究開発費は25500万円。20113月期の売上高は8.6%増の115000万円を計画する。

 

【カルナバイオサイエンス株式会社】

20034月に日本オルガノン株式会社の研究部門が母体となって設立されたバイオベンチャー企業。20083月、JASDAQ証券取引所NEO市場に株式上場した。細胞内、細胞間のプロテインキナーゼを標的にした創薬支援、タンパク質結晶化サービス、自社創薬事業をおこなう。

20062月には、オンコセラピー・サイエンスおよび韓国Crystal Genomics社と二つのがん特異的プロテインキナーゼ活性を阻害する低分子化合物の探索および関連する研究を共同しておこなう契約を締結した。加えて、097月から科研製薬株式会社と低分子有機化合物のキナーゼ阻害薬の創製のための共同研究を開始している。

200912月期の連結決算は、増収も営業損益が拡大となった。事業別セグメントの業績については、創薬支援事業の売上高は、前年同期比21.6%増の56000万円。その内訳は、キナーゼタンパク質の販売が同23.0%増の31200万円、同11.9%増のアッセイ開発が6700万円、プロファイリング・スクリーニングサービスの提供が同6.8%増の14800万円、X線結晶構造解析サービスやリード探索サービスのその他が同307.7%増3200万円であった。創薬事業については国立がんセンターなどとの共同研究に係る収入によって売上高は同230.1%増の12600万円となった。研究開発費は同32.8%増の39100万円であった。

 

本レポートの作成においては、国際商業出版株式会社の「国際医薬品情報」誌の岩垂 廣編集長に多く助言を賜った。感謝申し上げます。

テキスト ボックス: ビジネス・レポート Vol.1 
バイオベンチャーの経営戦略と開発動向
- 上場企業2009年~2010年決算データ分析 -